血の肯定
すでに五年程前、全米ヒット・チャートを騒がせているようなエレクトロニック・サウンドがブームとなっていた我が国では、コンピューターやデジタル技術の音楽応用は急速な発展をとげた。それにコンピューターの爆発的進化が加わり、新システムが開発され、「夢の楽器」が続々発売された。
デジタル・オーディオとは、いうなれば瞬時に作成される音のアニメ、あるいはコピー技術である。その結実した製品に‘サンプラー’があるが、その登場により、こと レコーディングに関する限り、人間の必要度は確実に減少した。つまり音楽制作の現場に合理をもたらしたわけであるが、今後、こうした傾向は、さらに進むものと思われる。
ヘヴィー・メタルやハード・コア、そしてエスニックに音楽関係者が走ったのは、こうした閉塞〈へいそく〉ムードが時代を、人間性を圧迫していたから、といってもいい。僕の内部にも同様の情調が住んでいた、しかし、走り出すには「もの」が視えすぎた。人々の敗走は人間の可能性に対する不信表明のように思われた。僕が絶望を語ったとすれば、それは可能性を信じていたいがためだった。光の萌芽〈ほうが〉は絶望者の胸に宿るものである。
そして僕は、弾琴録第一回に少しく記した読書三昧〈どくしょざんまい〉に入っていった。
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