爆発的進化

 かつて、‘エントロピー’という言葉が流行したことがあった。そう簡単には定義できないが〔負〈マイナス〉記号付可能性〈ポテンシャル〉のことだ〕と思ってもらえばいい。
 僕には、それが、ほぼ時を同じくして起きた‘終末論’流行と表裏一体をなしているように見えた。 どちらも人間的思考形態の産物だ。というより、論理そのものが有する線形質に深く関わっているのである。
 ある想念(着想)を文字によって表記する時、それは線形的な‘カタチ’をとらざるを得ない。
 が、想念(僕は、おうおうにして‘アイデア’という言葉を用いて、これを表わす)その原形たるアイデアは、決して一本の筋道だったものでなく、いわば、もつれた、一〈ひと〉かたまりの糸クズとして、意識の表層に浮上する。
 文章化という作業は、そんな糸のかたまりをときほぐし、時間軸にそった、一本の線と化す知恵の輪のようなものといえる。
 当然、そこには無理がある。
 何故なら、アイデアの本然は、もつれた糸クズであり、線形的なものは便宜上の形態であるからだ。
 記憶のメカニズムについて考えてみれば誰にも容易に理解できる。

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