「たかが音楽さ。そんなに根をつめることもあるまい。なのにこの痴人はどうだ?かわいそうに」
 そんな思いやりをもって人々が眼前の半狂人を眺めるのは当然である。が、その痴人が彼等に、ある種同様の憐憫を感じているとしたらどうだろう。人々の眼に痴人と映るこの半狂人は、痴人に徹することの中にしか幸福がない、と、半ば狂信的に思い込んでいるとしたら……。
 「ロックとは何か? パンクとは何か?」
 そんな問いかけに痴人は答えるだろう。
 「判〈わか〉ったというのは幻想、判〈わか〉らないのは馬鹿にすぎない」
 これは唐代の禅者の「禅とは何か」という質問に対する答そのままである。
 この言葉をもって、人々の心配を外〈そと〉に、病の向こう側へ突き抜けた痴人の独言を終える。

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