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その頃、よく読んでいたリルケの著書に、『マルテの手記』という散文作品があって、作中、その主人公マルテが、今までに、この星に生存したであろう人々と、彼等によってなされた著作の量を空想するところがある。その数は当然ぼう大なものだろうが、そのうち、せめて一冊でよい。この宇宙の秘密に達し得た書はないものか。彼はそう考える。僕も同様の妄想にとりつかれたのだ。朝に道を聞きては、夕べに死すとも可なり、
という孔子の言葉があるが、その頃の僕には、しきりに死のことが思われてならず、それがために、真実を希求する心にも、真に迫るものがあった。 |
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