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2002年10月15日

 


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  Rockers on the Web 002 


今回は迂濶だ。うかつと読む。ホームページ『拷問部屋は禁煙です』は、一度訪問したら癖になる不可思議な言語空間だ。

迂濶だったとは、うかつである

Momoyo The LIZARD
モモヨ(リザード)管原保雄



迂濶(うかつ)は、京都のバンドだ。……そう言いきっていいものかどうか知らないが、とにかく、京都を中心に活動しているそうだ。『そうだ』と書くのは訳がある。私が知っている迂濶はCD-Rやビデオやカセットテープを通してのものだからだ。だから、彼等が実在しているのかどうか、そう問われるとおぼつかないものがあるが、実は、私が実際にライブを見ているバンドだって、私が見ていないときは存在していないかもしれないわけで、こう考えてみると、とどのつまりは、私が実体があると思えば、それだけでいい。こう考えるしかない。そして、私が手ごたえを感じれば、まさにそれは実存しているバンドなのだ。

その点で、やはり、迂濶は、実存している、といえる。

思えば、彼ら、特にカナザワエリコとはながい付き合いになる。

最初、迂濶の演奏を聞いたとき、いわゆる混沌とした音の向こうに、これまで聴いたことのない音、世に例のないスタイルを予感したのだ。得体の知れないセンスが垣間見えた。そのセンスの正体を知りたくて、幾度かメールのやりとりをした。そうこうするうちに、彼女が琵琶を嗜むということを知った。で、私は、琵琶の生演奏をリクエストし、無理やりのようにカセットに録音して送って貰ったのだった。私は、それを素材としてコンピュータに取り込みリミックスするつもりだった。

当時、私は、邦楽の音源からロック、ファンク以上の爆発感を描き出そうとしていた。『アナーキーデイズ』というアシッドプラネットで一位になった曲はその表われで、琵琶など、邦楽の弦楽器が奏でる立てのりには、他の弦楽器にない破壊力がある、そう信じていた。彼女は、それをバンドで出すことを好まないらしかったが、私は、それをかえすがえすも残念に思った。

(が、ご存知のように、去年からの家庭のガタガタがあり、今年になって、そのリミックスにかかろうとしていたら、春、木の芽時になり、またトラブルメイカーが出没しだして、悲しいかな、かのリミックス作業は未完のままになっている。)

そして、今年の初め頃、彼らのライブビデオが送られてきた。そこには、アンバランスながら、きわどいところでバランスがとれている、いわゆる奇妙な味わいをもったライブが収録されていた。動と静が計算しない点で混在している。無表情とオーバーアクションが混沌としており、ギタリストとベーシストの対比はバランスの妙を保っている。そして、なによりも、いわゆる、旬のバンドでなければ得がたい味わいがあった。

ついで最初のCD-Rが送られてきたが、こちらは、彼らのヒストリーそのもので、曲順も彼等の主体的眼目にしたがったものだったと想う。魅力というか、味わいが満載されすぎていた。一つ一つの曲はいいのだが、録音音質もそれぞれが異なり、統一感が今ひとつなかった。

夏にはセカンドCD−Rが送られてきた。5曲収録のミニアルバム風のもの。レビューでもとりあげたが、ファーストと並べていたため、聴くべしということは以前から言っている事情もあり、内容については、ほとんど触れなかった。ということで、ここで、はっきり言おう。このCD-Rは面白い。秀逸とすらいえる。

5曲というのがよかったのかどうか、迂濶の魅力を極限まで発揮しているように思える。魅力の展示法、みせ方が、さきのCD-Rに比べて、実に効果的。結晶体のような印象すら受ける。散漫な展覧会ではなく、こじんまりとした個展のような感じというべきか。じつにすがすがしい仕上がりになっている。

なによりも聴衆を騙すふてぶてしさがよい。……この表現は誤解されるといけないので、少し説明を加えておこう。

……もともと迂濶の曲はカナザワエリコが単音楽器であるベースを持って語ることから発生したものが多く、ためにコード感とか、スケール感というような予定調和的観賞を聴くものに許さない。それが迂濶の魅力でもあるが、同時にサウンドに馴染みにくかったり難解な印象を与えもする。それが、このミニアルバムでは、聴く者に、単純に自我を放下して音に参与する余裕を与えてくれる作りになっているのだ。一聴してポップだが、それをきちんと分析すると、とんでもなくアバンギャルドな構成になっている曲というものが世の中にはある。これは一種、幻術に似たテクニックで、なかなか身につかないものだ。それが実現しているだけでも凄いことだと想う。

特筆すべきは、カナザワエリコの声のカラーが増えたことだ。表情が増している。儚げな声で歌いだし、その声をセンターにおいたまま、両サイドのステレオでレアな迂濶風ボーカルがかぶさってくる二曲目『まもなく』はすばらしい。ライブでは再現できないが、そんなことを気に病む必要はない。録音作品独自の味わいというものがあるからだ。そして何よりも、それが迂濶に新しい可能性をもたらすことは明白だ。名曲である。(……しかし、最初のCD-Rに比べて最も異なる点は、音空間のデザインだ。尋常ならぬセンスでまとめてある。どこで覚えたのだろう?)

サウンドを言葉で表現するのは難しい。が、無理を承知で言うならば、ブリティッシュサイケデリックの味わいというところだ。エレクトリックプルーンズやサードイヤーバンド、初期の、まだパンキッシュな味わいを残したピンクフロイドなんていっても彼らは知らないだろうが……。

ギターにリバーブをかけるところなんかもキッパリした思い切りのよさが伺える。

こういうサウンドはレコーディングする時点でキチンとプランを練っていないと、ぐしゃぐしゃになるものだ。それがキッパリ決まっている。偶然なのか、計算なのか、私には知る由もないが、とにかく、この5曲、構成がこなれている。リクエストがあるとするならば、詩的なところでたまには浄土を垣間見させて欲しいという点だ。

美が実る瞬間は確実に近づいている。

迂濶には、まだまだ秘密があるはずだ。いまだ見せていない世界がある。カナザワエリコの琵琶を聴いたことがある私は、それを知っている。むろん、それをそのままバンドに生かす必要はさらさらない。が、空間の魅力をこのCD-Rですくい上げたからには、彼らは、さらに新しい音世界を切り開かねばならない。彼らには、まだまだポテンシャルが残っている。彼等自身が知らぬ彼らが待っている。

ところで、

……ながらく、私は、バンド名を『迂闊』と、フロントエンドプロセッサーが変換するままに書いてきた。実際はCD-Rカバーにあるように迂濶である。いや、うかつだった。

2002年10月7日

文中でとりあげた『まもなく』OggVorbisファイルで試聴可能です。 

OggVoribisとは?


迂濶

迂濶 2nd CD-R
 
【収録曲目】
1 アンコール

2 まもなく  
 2.25MB Q4 ダウンロード 
 
3 妄想血路
4 戯言
5 
No Flowers
タイトルをクリックしてください。
『拷問部屋は禁煙です』収録の
歌詞ページを表示します。

メンバー、写真左から
Guitar,Cho タカスガチェリー
Bass,Vo   カナザワエリコ
Drums    タカダサトコ

 

 


※CD-Rは通販、ライブ会場において入手可能。詳細は下記ホームページを参照してもらいたい。

ライブスケジュールは
http://www.max.hi-ho.ne.jp/doctorboots/kokuchi.html

【関連URL】

拷問部屋は禁煙です。

http://www.max.hi-ho.ne.jp/doctorboots/

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